銀行に信頼される「通る」事業計画書とは?実例で学ぶ10の鉄則

「融資が下りないのは、事業計画書のせいかもしれない」――この言葉にドキリとした方へ。銀行からの融資を受けるには、書類の整合性だけでなく、信頼と未来を感じさせる「語り」が必要です。この記事では、銀行の視点を意識した“通る”事業計画書を、実例やポイントを交えて解説します。

鉄則1:銀行は「利益」より「確実性」を見る

よくある誤解として、「売上が大きいほど好印象」というものがあります。しかし、銀行が見ているのは“利益”でも“夢”でもなく、確実な返済計画と現実的な運転です。赤字でも資金繰りが成立している企業には融資が出ることもあります。

銀行の審査部門は、過去の数値よりも未来のシナリオに目を向けています。単に「儲かる見込みがある」だけでなく、「なぜその予測になるのか」「どんな変化に対応できるのか」といった現実的な対応力も評価対象です。自社の弱点やリスクを隠すのではなく、あえて提示し、どう乗り越えるのかを示す姿勢が、信用につながります。

ポイント:

  • 売上予測は保守的に
  • 回収サイト・支払いサイトの管理を具体的に
  • 月ごとのキャッシュフロー表を添付
  • 既存取引先との契約状況など、定期的な収益源を明示

鉄則2:数字の裏付けが信頼を生む

計画書には「3年で年商1億円」といった希望的数字が並びがちですが、それだけでは通用しません。なぜその数字になるのか?を説明できるかがカギです。

市場の成長率、既存顧客の規模、営業体制、季節変動――こうした複数の視点を持つことで、数字が“リアル”になります。また、直近のトライアル販売やクラウドファンディングの支援実績など、実際に反応があったデータは有効です。

想定数値裏付けとなるデータ
月商300万円主要取引先3社からの見積ベース
粗利率40%過去の事業実績と仕入契約書
人件費100万円/月採用予定の人員構成と給与見積
営業経費30万円/月媒体出稿費、交通費、営業人員の月次活動計画

鉄則3:借入の理由を曖昧にしない

銀行担当者がもっとも重視するのは「お金の使い道」です。漠然と「資金繰りが厳しいから」ではなく、「◯◯の仕入資金」「△△機材の購入」など、明確かつ定量的に記述しましょう。

用途の明確化は、返済の根拠づけにもなります。仮に売上が予定より落ち込んでも、必要最低限の返済が継続できる体制をセットで説明できると、評価が大きく上がります。

望ましい書き方:

「仕入先A社との契約に基づく3ヶ月分の仕入費800万円と、業務効率向上のためのPOSレジ一式120万円を合わせた計920万円を借入希望。分割返済5年、月額元金15万円で計画」

鉄則4:経営者自身を見られている

事業計画書の評価には、「書いた人」が必ず影響します。履歴書だけでなく、過去の職歴で得たスキルや人脈、どんな動機でこの事業を始めたのか――そこに“人間的な説得力”が宿ります。

また、経営者自身が業界の「当事者」としての知識を持っているかどうかも問われます。例えば、飲食業であれば「厨房の効率動線の設計」や「季節別の原材料仕入れコントロール」など、現場を理解した提案や数字は大きな武器になります。

自己紹介は数字と同じくらい重要です。SNSの運用実績や、クラウドファンディングでの支援者数なども、あなたが「応援される存在」であることを示す要素になります。

鉄則5:資料の整備で一歩先をいく

銀行の目を引くには、計画書だけでなく「それを裏付ける資料」が必要です。以下のようなドキュメントをあらかじめ揃えておきましょう。

  • 仕入見積書
  • 主要取引先の契約書(または内諾メール)
  • 決算書・税務申告書(過去2年分)
  • 運転資金の推移表(Excel可)
  • 販路の見込みリスト(BtoBの取引先候補など)
  • 設備導入計画書(ROIと連動)

鉄則6:事業の社会的意義や持続可能性も加える

銀行は近年、「金融の脱炭素化」や「地域経済との調和」といった観点も重視しています。単に利益が見込めるというだけでなく、「この事業が社会にどう貢献するか」という視点も記載しておくことで、好印象を与えることができます。

たとえば、環境負荷を抑えた生産工程、地域の雇用創出、女性や高齢者の活躍支援など、SDGs(持続可能な開発目標)に関連する要素を織り交ぜることで、金融機関の担当者の記憶に残りやすくなります。

鉄則7:見落とされがちな「競合分析」も重要

多くの事業計画書では、競合に関する記述がごくわずかか、あるいは一切書かれていないことがあります。しかし銀行側は「その業界で成功する根拠」を求めているため、競合との比較分析は欠かせません。

競合の価格帯、販路、強み弱み、自社との差別化ポイントを記述することで、より説得力のある事業構造が浮かび上がります。差別化要素が明確な事業は、銀行にとっても「応援しがいのある企業」と映るのです。

鉄則8:数字にストーリーを持たせる

売上高や利益の推移、損益計算書の内容にストーリー性があると、銀行担当者の印象が大きく変わります。たとえば「初年度は試験販売中心で赤字だが、2年目からは設備投資効果により黒字化を達成」といった明確な成長曲線が示されていると、審査の納得感が増します。

数値の裏にある「計画」「仕組み」「戦略」こそが銀行の関心事です。単なるエクセルの数字を並べるだけでなく、「なぜこの数字なのか」「それがどう変化するのか」を言語化することが大切です。

鉄則9:「想定外」を想定する

コロナ禍や資材高騰、為替の急変など、予測不能な事象にどう対応するかを計画書に含めておくと、評価が格段に上がります。リスク管理能力を評価する銀行にとって、「リスクがある=ダメ」ではなく、「リスクに対して備えているか」が重要なのです。

代替サプライヤーの確保、変動費と固定費の弾力性、政府補助金の活用可能性など、危機時の選択肢を具体的に提示しておくことで、「この経営者は先を読んでいる」と印象付けられます。

鉄則10:計画書は“更新”されるものという意識

事業計画書は一度書いて終わりではありません。実際の結果を見ながら定期的にアップデートし、銀行と共有していく姿勢が信頼を積み上げていきます。

提出後に「半年後に進捗報告を出します」などと自発的に申し出ると、信頼性が高まり、追加融資や条件見直しなどの交渉もスムーズに進みます。計画と実績を照らし合わせ、常に軌道修正できる経営者は、長期的な融資パートナーとして期待されます。

このように、事業計画書は単なる融資申請の手段ではなく、経営の質を表す鏡とも言えます。数字・資料・言葉に心を込めて、次のチャンスを確実に掴み取りましょう。

まとめ

銀行からの融資を得るためには、単に希望額を提示するだけでは不十分です。事業の確実性、数値の裏付け、使途の明確化、経営者の信頼性、そしてリスクへの備え――これらが一体となって、初めて銀行にとって「貸してよい相手」として認識されます。

今回紹介した10の鉄則は、どれも特別なスキルを必要とするものではありません。ポイントを押さえて丁寧に準備すれば、事業計画書は銀行との信頼関係を築く強力な武器となります。数字だけでなく、“あなたの想い”も、読み手に伝わるような一枚に仕上げてください。

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